祖母が精神病院に入院して1ヶ月ほどたった頃の話です。
遠距離介護のため、私と私の母は1度兵庫県に帰り、3週間ほど祖母とは会っていませんでした。
本来は祖母が入院していることもあり、1週間ほどで、もう1度宮崎県の祖母の様子を見に行こうと考えていたのですが、薬を見直す作業にはいるので少し面会の期間をあけたほうがいいようなことを病院の方には言われました。(遠回しにですが)
祖母が私や私の母に会うと、「こんな病院にいれて!」と怒り出したりすることが多かったので、あまり会って刺激をあたえては治療の邪魔になってしまうからなのかもしれません。
祖母の姉である「秋さん」が入院した時には、副作用のある薬を減らすだけだったようですが、祖母は秋さんと病状が違うので(被害妄想がひどいので)、薬を減らすだけでなく、他の薬を試し、どの薬が合うのかも調べてもらうことになりました。
なので3週間ほどは病院に祖母を任せ、祖母の様子が安定した頃に様子を見に行くことになりました。
そして3週間後、久しぶりに祖母の様子を見に面会に行きました。
(長い間ほったらかしにして!と文句を言われることを覚悟して 笑)
私:「おばあちゃん、久しぶり!」
祖母:「おや?ムーちゃん(私)ね?久しぶりやね。元気ね?」
私:「元気やで!おばあちゃんはどうなん?病院には慣れた?」
祖母:「そうじゃねぇ。ところでわたしゃいつまでここにおるんね?」
私:「3ヶ月ぐらいは検査にかかるって言ってたけど。」
祖母:「ふ〜ん。そうね。」
私:「ここはご飯はどうなん?」
祖母:「ふつうじゃよ。時々美味しいお茶がでるよ。」
私:「美味しいお茶?そうなんや 笑」
このように何気ない会話を1時間ほどしました。
最初、祖母の顔を見た時に思ったことなのですが、表情が以前とはすごく違って見えました。
以前は険しい顔でいることが多かったのですが、この日は最初から最後までずっと穏やかな表情をしていました。
もちろん会話をしている間もずっと穏やかな感じで、いつもなら文句を言っていたはずの場面でも怒りだすことがなく、機嫌良く話していました。
まぁでも、まだ入院して1ヶ月しかたっていないので、被害妄想が治ったとはまだ考えられません。
この日はとりあえず祖母の様子は悪くないようだし、安心して面会を終えることができました。
そして次の日も同じように祖母の面会に行き、何気ない会話を1時間ほどしました。
昨日と同じように表情も穏やかで、文句を言うこともなく、帰り際には「いつもありごとうね。」と言ってくれ機嫌も良いようでした。
途中、看護婦さんが脈拍などをはかりにきた時も、嫌がるそぶりもなく笑顔で看護婦さんと話しをしていました。
病院ということで安心感を感じているからなのでしょうか?
祖母がまだ家で暮らしていた時やグループホームでの暮らしでも、精神的に不安定になると、「腰が痛い」「心臓が苦しい」と言い出し、「病院に連れて言って!」と言い出すことがよくありました。
(もちろん、病院に連れて行っても異常なしと言われます。)
もしかすると病院に入院しているということが、精神的に安定をもたらしてくれているのかもしれません。
前日同様、この日も機嫌よく過ごしているようでした。
そして面会3日目。
1日目と2日目は機嫌良く過ごしてくれていました。
被害妄想が治ることに半信半疑だった私は、病院の環境に慣れてきたことや病院にいることの安心感が、祖母の機嫌の良さにつながっているのかな?と考えていました。
なので被害妄想がマシになっているとは考えていませんでした。
しかしこの日の出来事で、ついに私も「もしかして。」という思いを抱くことになります。
面会3日目のこの日、祖母の元に行くと、なにやら祖母は不安げな表情でした。
私:「おばあちゃん、どうしたん?」
祖母:「ムーちゃん(私)、お母さん(私の母で祖母の娘)病気なんじゃろ?」
私:「え?なんで?病気じゃないけど?」
祖母:「うそ言いなんなよ?病気って聞いたよ。」
私:「誰に聞いたんよ?」
祖母:「看護婦さんじゃよ。お母さんが病気で大変じゃって。」
この後、祖母の話をよく聞いてみると、どうやら夢を見てそれを現実と勘違いしてしまったようでした。
私:「おばあちゃん、それ夢やろ!(笑)、お母さんは元気やで!またおばあちゃんの様子を見に来るって言ってたし。」
祖母:「そうね。良かった!はよ会いたいよ。」
そう言うと祖母は泣き出してしまいました。
私はすごく驚きました。
自分の娘が病気と知れば、心配することは当たり前です。
しかし被害妄想になってからのここ数年、祖母は自分の娘(私の母)を泥棒のように扱い、自分の気に入らないことを全て娘のせいにしていたからです。
そんな祖母が、娘のことを思い涙を見せ、「会いたい」と言うなんて。
被害妄想になる前の祖母に戻ったようでした。
この後、祖母は私が持ってきたおやつをしっかりと食べ(笑)、笑顔で面会を終えました。
この出来事から、被害妄想が治ることに半信半疑だった私も「もしかして治るかも。」という思いを抱くようになりました。
さすがに3日も良い状態が続くと、被害妄想がマシになってきていると考えるしかありません。
被害妄想になって以来、これだけ表情も柔らかく、機嫌が良い期間が続いたことはおそらくありませんでした。
この出来事を母に話すと、「私のことを悪く思っていないんだったら良かったわ。」と言ってはいましたが、まだ半信半疑のようでした。
この後、1週間は私が祖母の様子を見に行き、その後、交代で母が来ることになっていました。
もしも私の母が面会に行っても祖母が不機嫌にならなければ、被害妄想がマシになってきているということになります。
(今までは私の母の顔を見た途端、祖母の表情は険しくなり不機嫌になっていたので。)
では母が面会に行った時の話はまた次回にさせていただきます。