前回の続きになります。
祖母は手首を骨折してしまったので、手術をし、2ヶ月ほど入院することになりました。(実際は1ヶ月で退院することになるのですが 笑)
入院の際は、祖母が認知症であるということと、被害妄想があるということは伝えはしましたが、それほど詳しくは聞かれなかったこともあり、細かいことまではわざわざ説明はしませんでした。
(あんまり細かく言い過ぎるのも、何か押し付けがましく感じられないかなと思ったので)
お年寄りの入院患者さんも多いようだったので、「まぁ、病院だから祖母みたいな人の扱いにも慣れているだろう」と、楽観的に考えてしまいました。
(結局いつも後から後悔することになるのですが)
しかし、認知症にも被害妄想にも色々なタイプの人がいます。
同じ病名でも人それぞれ症状は違ってきます。
特に私の祖母は、認知症のわりにひつこく覚えているタイプで(笑)、自分の気になることに関しては、私達病気でない人よりもこだわって覚えているくらいです。
そのわりに、思い込みや、勘違いが多く、自分の都合の良いように解釈してしまうことも多くなっていました。
今となっては、こういった細かな情報を具体例をあげて、入院する際に遠慮せずに病院側に伝えておいたほうが良かったのかな。と思っています。
そうすれば、もう少し、看護婦さん達も祖母を扱いやすかったかもしれません。
祖母の入院生活
入院してすぐに祖母は手術をすることになります。
全身麻酔をして手術をしたので、麻酔が覚めてからベットから動いたり、変な行動をとらないように、手術の日は母が1日一緒に泊まることで無事何事もなく終えることができました。
しかし、手術箇所の状態が良くなるまではベットから1人で起き上がることは禁止されていたので、(それでなくても足が悪いので1人で歩かせるのは危険ですが)1日のほとんどをベットの上で過ごさなければなりませんでした。
私達の家にいる時でさえストレスをため、被害妄想が起こってしまった祖母なので、病院で大人しくしていられるはずがありません。
(私達の家での出来事はこちら)
私と母は、交代で毎日祖母の様子を見に行っていたのですが、いつも表情が硬く、常に怒っているような状態でした。
祖母:「ムーちゃん(私)、わたしゃもうこの病院から出るからね」
私:「おばあちゃん、手術した箇所が良くなるまでは退院させてくれへんで。」
祖母:「何でね!わたしゃ、もう大丈夫じゃよ!ここにおったら頭がおかしくなりそうじゃ。」
私:「でも、もうちょっと良くなるまでは辛抱せなあかんわ。」
祖母:「ここの看護婦や先生は嘘つきばっかりじゃ!」
私:「何の嘘をついたんよ?」
祖母:「もうすぐ退院できますよって、言っときながら全然退院させてくれん!」
私:「そりゃ、すぐって言っても、おばあちゃんの腕の状態次第やからなぁ。」
祖母:「あの人達は信用ならんよ!」
認知症の方に対応する時には、安心させてあげるためにその場しのぎのような会話をすることがよくあります。
祖母のように「退院したい!」と強く思っている患者さんには、「もうすぐ退院できるからね。」と安心させてあげることが良い対応になると思います。
認知症の場合、安心させてあげると、その時強く思っていたことを忘れてくれる場合が多く(この場合だと「退院したいという気持ち」)、落ち着いた生活ができるからです。
また認知症なので、この会話自体を忘れてしまうので、良い意味で約束したことを覚えていません。
一般的な認知症患者さんには
何かの訴えがある→安心させてあげる→その会話を忘れる→また同じ訴えがある→また安心させてあげる→その会話を忘れる
こういった対応を、その都度繰り返すことで、安心した生活を送ってもらいやすくなります。
しかし、私の祖母の場合は自分が気になったことだけは覚えています。
そこがちょっと普通の認知症の方と違うところであり、ややこしいところでもあります。
その場しのぎの会話では通用しません。
約束したことを覚えているので、次の日も同じような会話をすれば「前もそう言ったのに、全然言ってることをしてくれない」。こう思ってしまい、安心どころか、相手を「嘘つき」などと悪く思ってしまいます。
そうなると先生でも看護婦さんでも、悪い印象を持った人の言うことは聞きたがらないので(その人が対応すると機嫌が悪くなってしまうので)、扱いが難しくなってしまいます。
看護婦さんにベットから降りてはいけないと言われても、勝手に降りようとしたり。
手術した腕を使ってはいけないと言われてるのに使おうとしたり。
トイレはオムツにしてと言われているのに、トイレに連れて行ってと何度も訴えたり。
またある日には、先生に「腕が良くなったらいつでも退院していいよ。」と言われたらしく、今までは「嘘つきだから信用できない」と言っていた祖母でしたが、自分の都合良いことは素直に聞いてしまいます。しかも都合の良いように解釈して。
病院では週に1回のお風呂の日があるので、その前日までにバスタオルなどを用意して持って行かなくてはなりません。
私の母も病院に言われた通りにタオルを用意して病院に預けていました。
次の日にはお風呂で使用したタオルを持って帰る予定でしたが、なぜか祖母のタオルはキレイなままです。
母:「お母さん(祖母)、今日お風呂入った?」
祖母:「いや、入っとらんよ。」
母:「何で?今日はお風呂の日やろ?」
祖母:「わたしゃ、家帰ってからはいるから。」
母:「何で!まだ退院はできへんよ!」
祖母:「先生が『いつでも退院していいよ。』って言ってくれたんよ。」
母:「そんなこと言うはずないやろ!」
この後、看護婦さんに確認してみると、先生が「良くなったら退院していいよ。」と言った事を、祖母は「いつでも退院していいよ」って言ったと思い込んでおり、明日にでも退院するつもりでいたそうです。
なので、看護婦さんがいくら説得しても「明日帰るから、わざわざ病院のお風呂に入らなくてもいい」と言って聞かなかったそうです。
看護婦さんは「すごい頑固ですね(笑)」とあきれていたので、やはり、病院側には祖母の状態について、詳しく説明するべきだったのかなと感じました。
祖母にはその場しのぎの会話は逆効果で、事をややこしくしてしまう可能性があることを病院側に具体的に説明していれば、もう少し、病院側も対応しやすかったのかもしれません。
祖母を入院させる時には、祖母の細かな症状まで伝えても、対応してもらうのは難しいだろうと思っていましたが、今回の出来事から考えてみると、細かい症状こそ、病院側に伝えることが大切だと感じました。
この後、祖母はまた病院の先生を困らせる事件を起こしてしまうのですが、その話は
また次回に。