前回書かせていただきましたが、祖母はムカデに恐怖心をいだくあまりに色々な物がムカデに見えてしまったのですが、ムカデがもうでないという安心感を得ることで、幻視(錯覚)を見ることはなくなりました。
それ以来、幻視を見ることもなく過ごせていたのですが、再び幻視(幻覚)を見ることとなってしまいます。
通帳や印鑑を隠しまわる
祖母は認知症になって以来、物盗られ妄想が酷くなっていました。
自分の娘(私の母)を疑ったり、自分の姉妹を疑ってしまうこともありました。
(私の母を疑った時の話はこちら、姉妹を疑った時の話はこちら)
認知症になると1度疑ってしまったり、勘違いしてしまった事に対して、いくらわかりやすく説明しても「自分の考えが正しい」という思い込みが強く、修正がきかない傾向があります。
私の母は祖母に1度疑われて以来、祖母の介護に帰るたびに、祖母から「お前は、私の通帳を盗んだ!」と言われ続けていました。
いくら母が「通帳を盗んでいない」と言っても聞く耳を持ってくれません。
そして祖母の中の母に対する悪いイメージが、通帳や印鑑を隠しまわるという行動を起こさせてしまいます。
母が介護をおえて、祖母の家の宮崎県から兵庫県へ帰る前日あたりから、祖母は押し入れやタンスをゴソゴソし、通帳や印鑑などの自分にとって大事な物を隠します。
(母に盗られると思ってしまうようです)
隠した場所をきちんと覚えていればいいのですが、1日に何度も場所を変えて隠しまわるので、認知症の祖母は自分の隠した場所を忘れたり、勘違いしてしまいます。
祖母は「自分が隠した場所を忘れるはずがない」と思っているので、何か物がなくなった時には1番身近にいる私の母に疑いの目がいってしまいます。
また以前にも盗まれたと思い込んでいるので、よけいに疑われやすくなってしまいます。
電話で話したことを勘違いする
母が兵庫県に帰り、2日ぐらいすると必ず「通帳がなくなった」や「印鑑がなくなった」という電話が祖母からかかってきます。
祖母:「みっちゃん(私の母)、お前はまた通帳を盗んで帰ったじゃろ!」
母:「また失くしたの?だから隠しまわったらあかんって言ってるやろ!」
祖母:「今朝見たらなかったがね!お前がとって帰ったんじゃろ!」
母:「私は持って帰ってません。昨日の夜はあったの?」
祖母:「昨日まではあったよ。」
母:「じゃあ、私は兵庫県に帰ってたんやから、持って帰ることができへんやろ?」
祖母:「あ、そうか。じゃあ誰がとったんじゃろか?」
母:「誰もとらへんの!もう1度、しっかり押し入れやタンスを探してみ。」
それからしばらくすると、通帳があったという電話があり、祖母の興奮もおさまったようでした。
しかし次の日にまた電話がかかってきます。
祖母:「お前(私の母)、今どこにおるんね?」
母:「兵庫県やけど。」
祖母:「机に置いてた印鑑どこやったんね?」
母:「印鑑なんて知らんよ。」
祖母:「さっき持って行ったがね。」
母:「何でよ!私は兵庫県にいるのにどうやって持っていくんよ!昨日も兵庫県から電話したやろ?」
祖母:「嘘言いなんな!お前、昨日もここに来たじゃろ?」
母:「昨日は電話したんよ?また勘違いしたんじゃないの?」
祖母:「またそんなこと言うて!わたしゃ勘違いなんかしとらん!はよ印鑑返しない!」
祖母の頭の中では、昨日の電話が、母と直接会って話をしたということになっていました。
そしてその勘違いが、母が家にいるという幻視(幻覚)を見せてしまい、同時に印鑑の隠した場所を忘れてしまったために、「印鑑を母が持っていった」ということになってしまったんだと思います。
こうなってしまうと、こちらが何を言っても無駄です。
祖母の頭では実際に母を見たことになっているので、こちらが電話だったと主張しても納得してくれません。
第三者が話をする
前回も書かせていただきましたが、祖母のように幻視(幻覚、錯覚)を見る状態にある時は不安な気持ちになっている可能性が高いので、「安心感」を与えてあげるのが1番の薬になります。
興奮した状態の祖母を説得することは難しく、母がいくら「自分は祖母の家に行っていない」と言っても、祖母の怒りが増すだけで、よけいに母の印象が悪くなってしまいます。
このような時は、私がかわりに話をするようにしています。
祖母は私にはまだそれほど悪い印象は持っていないので、怒らずに話を聞いてくれます。
この時は母の疑いを晴らすことはできませんでしたが、私がもうすぐ祖母の家に行くことを伝え、その時に必ず印鑑を見つけることを約束することで、祖母を落ち着かせることができました。
認知症の方は、自分が不信感をもってしまった人の意見はほとんど聞いてくれません。
私の祖母と母のような状態になった時は、周りの家族がかわりに話をしてあげることがとても効果的だと思います。
また1人暮らしのお年寄りの場合は、来ていただいているヘルパーさんや訪問看護さん、ケアマネージャーさんなど、認知症の方が信頼している人に話をしてもらうことも効果的です。
親子だからこそ感情が入ってしまい、介護が難しくなることもあると思います。
介護する方、介護される方が、少しでも良い介護生活を送っていくためにも、時には周りの家族に頼ったり、協力してくれるヘルパーさんやケアマネージャーさんに頼ることも、大事なことだと感じています。