前回書かせていただいたように、祖母はデイサービスに嫌々行くということも少なくなり、これで「訪問看護」「ホームへルパー(訪問介護)」「デイサービス」と3つの介護サービスを利用していくことになります。
祖母の「できるだけ自宅に長く住みたい」という希望を叶えるためには、この3つの介護サービスは必要不可欠でした。
祖母が気持ちよく、この3つの介護サービスを受けてくれればと、私達家族は願っていましたが、さっそくホームヘルパーさんに対する不満を言い出すことになります。
祖母の不満 その1「ご飯の味が気にいらない」
祖母は昔から、自分で作ったお米や収穫したての野菜を食べたり、新鮮な魚を親戚にいただいたり、時には今は亡き祖母の夫である私のおじいちゃんが捌いた新鮮な鶏肉を食べたりと、比較的美味しいものを食べる機会が多くありました。
そのおかげで味に敏感になり、私達家族の中では「おばあちゃんが美味しいと言えば間違いなし!」という感じだったのですが、認知症になって以来、この敏感な舌が逆に介護する上で大変になってしまう時が多々ありました。
祖母の味付けで育った母やその母の味付けで育った私が料理を作った時でも時々、文句を言って食べない時があります。
まして他人(ホームヘルパーさん)が作った料理の場合、その人の育った環境によって味付けの感覚が異なるので、祖母にとっては濃いすぎたり、辛すぎるということがありました。
祖母は認知症になって以来、「食」と「お金」に対して、こだわりが強くなっていました。
なので、ご飯の味が気に入らないと機嫌が悪くなってしまいます。
機嫌が悪くなると、被害妄想が激しくなってしまうので「あのヘルパーさんは嫌がらせで味付けを辛くしている」と言い出すようになってしまいました。
この時はまだ、ホームヘルパーさんに直接文句を言うことはありませんでしたが、その怒りは、全て私の母にむけられることとなります。
祖母:「お前がかってにヘルパーなんかを頼んで!」
母:「何でよ!自分が料理ができんようなったからお願いしたんやろ?」
祖母:「わたしゃ、何でもできる!お前は私に美味しいものを食べさせんようにして!」
祖母:「私のお金なんやから、私の好きな物食べさせない!(食べさせなさい!)」
このように何か不満があると全て母のせいにしてしまいます。
まだ、母に言う分にはマシなのですが、不満が溜まりすぎると次はホームヘルパーさんに直接言ってしまう可能性も十分に考えられます。
そこで母はこのことをケアマネージャーさんに相談することにしました。
その結果、最初は毎日来るヘルパーさんが変わっていたところを、ケアマネージャーさんの計らいで、祖母がお気に入りの2人だけで1週間を交代で来てもらえることになりました。
このおかげで、「食」に関して文句を言うことが少なくなり、結果的に被害妄想がおきることも少なくなっていきました。
祖母の不満 その2 「買い物の確認」
祖母は遠距離介護のため、私や母がいない間は1人暮らしをしていました。
(1ヶ月に1週間〜10日ほど)
私や母は祖母の介護から帰る直前に、祖母が食べるであろう1週間分のパンやお肉、お魚(シャケやシシャモ)を冷凍し、野菜もある程度ストックして帰り、それをヘルパーさんに料理してもらうようにしていました。
そして週に2回、ヘルパーさんに買い物に行ってもらえる日があったのですが、その日に足りないものや祖母が欲しい物(お饅頭やアイスなど)を買ってきてもらうようにしていました。
買い物のお金は、あらかじめ月に10,000円をヘルパーさんに預け、ヘルパーさんが買い物をしたレシートを帳面に張りつけてくれます。
そして私か母が祖母の家に介護へ帰った時に、おつりをいただくという形をとっていました。
祖母にお金の心配をさせることがないようにしたつもりだったのですが、祖母はここでも被害妄想をおこしてしまいました。
祖母には、私の母が「買い物のお金は私が出すから、お金の心配せんと好きな物買ってもらいよ!」と言っていたのですが、祖母はどうしてもお金に関して心配せずにはいられないようなんです。
帳面は祖母にわかりにくいところにしまっていたのですが、それを見つけだし、レシートを何度も見ていたようです。
そして私の母にこのような電話をかけてきました。
祖母:「ヘルパーさんがみっちゃん(母)のお金で自分の野菜まで買っとるよ!」
母:「そんなわけないやろ!ヘルパーさんはそんな悪いことしません!」
祖母:「いや、私は人参なんか食べとらんのにレシートには書いてあるよ!」
母:「何でよ!2日前に人参で料理してもらったって言ってたやないの?」
祖母:「お前はまた嘘ついて!わたしゃそんなこと言っとらん!」
祖母は時々、自分の食べた物を忘れることがあったので、このように考えてしまいます。
ヘルパーさんは祖母の被害妄想がここまで酷いとは思っていなかったと思うので、買ってきた食材をとレシートを比べ、わざわざ1つ1つきっちり祖母に見せることはなかったと思います。
しかし被害妄想の激しい祖母は、ヘルパーさんが買って来た食材をきちんと見せなかったことに疑いをもってしまいました。
そこで、このこともケアマネージャーさんに相談したところ、ヘルパーさんに買い物をしてもらった時は、祖母にレシートを見てもらい、買ったものを1つ1つ確かめてもらいましょうということになりました。
こうすることで、レシートに書いてある食材をきちんと買って来ているということを印象づけることに成功しました。
相談することの大切さ
祖母の責任者である私達家族の立場からすると、ヘルパーさんをはじめ、お世話になっている方には、あまり細かいことを言うことに、気がひける時があります。
しかし、些細なことをほったらかしにすると、介護される側にとっては、それがストレス(不満)となっていき、私の祖母のように被害妄想が起きたりする場合があり、そのことがより介護を難しくしてしまう時があります。
介護をしていくと、「この場合はどうすればいいんだろう?」ということが、どんどん起こっていきます。
介護を受ける人の性格、病気の症状によって、同じ状況でも答えは様々だと思いますが、些細なことでもケアマネージャーさんや家族で話し合うことが、介護される側にとっても、介護する側にとっても良い介護につながっていくのではと感じています。