前回書かせていただいたのですが、祖母は私の家(兵庫県)での暮らしが合わず宮崎県での1人暮らしに戻ることとなりました。
私と母もこれまで通り、交代で宮崎県の祖母の家に手伝いに行くことに。
まだこの時は料理や洗濯は何とかできていたのですが、1人で買い物に行くことができなかったので(パーキンソン症状の影響で足が悪くなっていたので)、祖母が1人で暮らす期間が1週間以上にならないように母と交代で祖母の家に帰っていました。
(食べ物はお肉なんかを冷凍でストックしていました)
ただ、祖母はどんどん母に対して悪い印象(被害妄想)をもっていってしまうので、母が帰るとケンカが多くなり、それがまた悪い印象となってしまうという、悪循環が起こってしまいました。
そしてその祖母の頭の中の悪い印象が、ある行動をおこさせることとなります。
いつものようにほどほどにケンカをして(笑)、祖母の家から帰って来た母のもとに電話がかかってきました。
祖母:「みっちゃん(母)、私の通帳と保険証どこにやったんね?」
母:「私はどこにもやってないよ!」
祖母:「嘘いいなんな!お前が持って帰ったんじゃろ!」
母:「え?私がそんなことするわけないやないの。通帳はともかく、保険証なんて持ってかえっても何にもならんやろ?」
祖母:「お前は私が病院に行けんようにしたいんやろ!はよ、持ってき!」
母:「だから、私はそんなことしません!よく探してみて、絶対あるから!タンスとか見たの?」
祖母:「探してもないがね!タンスにもない!」
母:「絶対どっかにあるから探してみて!」
(以前、祖母と母が病院に関してもめた原因はこちら)
こんな感じで1度電話を切ったのですが、認知症が徐々に進んでいた祖母にとって、物を探すということはとても難しいこととなっていました。
この時の祖母は物を認知する機能が低下してきていたので、色々と失敗が多くなっていました。
例えば、トイレを流し忘れることが多くなったり、水道の水を出しっぱなしにしたり、冷蔵庫の中の物を探すのが難しくなったり。
このような状態だったのでもちろん通帳と保険証は見つからず、この日から1日に何度も同じような電話がかかってくるようになりました。
もう何を言っても聞く耳を持たないので(もちろん私が言っても)、今度は祖母の長男(私の叔父)に探しに帰ってもらうことに。
叔父が宮崎の実家に帰り、祖母に何度も説明したのですが母の疑いは晴れませんでした。
叔父は「通帳が見つかれば、かあちゃん(祖母)も間違いに気づくやろう。」と言って楽観視していたのですが、そう甘くはありませんでした。
叔父が通帳と保険証を見つけ、祖母にみせると
祖母:「ありがとう、マーちゃん(叔父)!」
叔父:「これでみっちゃん(母)が盗ってないことがわかったやろ。」
祖母:「これ、どこから出てきたんね?」
叔父:「タンスの中やけど。」
祖母:「やっぱりみっちゃん(母)が隠しとったんやね。」
叔父:「なんでやねん、隠す意味なんかないやろ!」
祖母:「いや、あの子は隠したりするんや!」
叔父:「・・・・(説得をあきらめる)」
この時の祖母は、昨日食べたご飯やあまり印象に残ってないことは忘れることが多くなっていたのですが、自分(祖母)がこだわっていることに関しては、しっかりと記憶が残っているんです。
母が電話で「タンスとか見たの?」と言ったことを覚えており、それを母が隠し場所を知っていたと思い込んでしまったのです。
被害妄想がひどくなってくると、疑った人に対して色々な記憶や印象を悪い方向に膨らませ、私たちが想像もしないような妄想で、物事を判断するようになります。
祖母の行動をまとめると
母が自分の言うことに反対ばかりする
↓
母は悪い人
↓
通帳や保険証を盗られてしまうんじゃないか(不安になる)
↓
どこかに隠す
↓
認知症なので隠した場所を忘れる
↓
自分は隠した場所を忘れないと思い込んでいる
(不安なので色々な場所に移動させるが、その中の1つの隠し場所の記憶だけしか残っていない)
↓
自分の記憶の中の隠した場所にない
↓
母を疑う
また1度疑ってしまうと、こちらがいくら間違いを指摘してもどうにか理由をつけてその人を犯人にしようとします。
常識的な考えも通用しなくなります。
この時で言うと、祖母は見つかった通帳の残高が変わっていないことは理解できていました。
普通だと「お金は減ってないし、隠すなんて意味の無いことをする訳が無い。」と思うところですが、祖母は「意地悪で隠された」や「お金を使わせないようにされる」と思い込んでしまっていたんです。
何を言っても無駄で(いくら丁寧に説明しても)、こちらが正論でも相手(祖母)の言い分と違うと怒りをどんどん大きくしてしまうことになります。
とにかく認知症の人が怒っている時は、「落ち着かせてあげる」ことが1番大事なことだと思います。
話題を変えて話をそらしたり、「絶対あるはずだから一緒に探そう」とやさしく言ってあげたり。
実際、自分が疑われると「あんた(祖母)が隠したんでしょ!」と言いたくなる気持ちはわかるのですが、こちらが相手(祖母)と同じように怒りに任せて何かを言ったりすると、後々の介護がとても大変なものとなってしまう可能性が高くなります。
(うちの場合は大変なことになっています😅)
認知症の方はいろいろな出来事は忘れていくそうなのですが、その時に相手に抱いた感情は残ってしまうそうなんです。
こちらが感情的にものを言うと、認知症の方の中では「あの人は嫌なことを言う人」という感情だけが残ってしまい、その人に対して攻撃的な態度で接するようになります。
ただ、「落ち着かせてあげましょう」と言うのは簡単ですが、実際自分の感情をコントロールし、怒りを抑え、さらに思いやりをもって接するというのは大変難しいことです。
私も最初のころは自分の感情をうまくコントロールできず、祖母の怒りを増加させてしまうこともありました。
今は少し考え方を変えて、自分がイライラしそうになったら、祖母が認知症になる前の状態を思い出すようにしています。
やさしかった頃の祖母を思い出し、昔お世話になったことなどに感謝をすると自然とイライラが少しおさまってくるんです。
(むりやり感謝しようとする時もあります😅)
イライラが少しおさまってくると、相手の苦しみを考える余裕も少しでてきます。
祖母のように家族さえも疑ってしまう精神状態というのはどれほど苦しいんだろう?と思うようになりました。
このように思えた時は、自然とやさしい言葉をかけてあげられているんじゃないかと思います。
もちろん、イライラを抑えられない時も多々ありますが(笑)、少しずつイライラする回数は減っていっているような気がします。
もしこのブログを読んでくださっている方で、介護の中でイライラすることが多い方がいましたらぜひ試してみてください!
最初からすぐにうまくはいかないと思いますが、感謝することが習慣のようになり、心に余裕ができてくると、思った以上に介護生活が(相手との関係が)良い方向にいくんじゃないかと思っています。
それでは今回はこのへんで。