前回は祖母が自分の妹を疑ってしまった時のことを書かせていただきました。
(祖母が妹にお金を盗られたと言い出した時の様子はこちら)
認知症の人の物盗られ妄想(被害妄想)は、一般的に訂正が不可能と言われています。
1度自分が疑いをもった人に対して、何らかの理由をつけて悪者にしようとします。
以前祖母が自分の通帳の隠した場所を忘れてしまい、私の母に通帳を盗られたと勘違いした時、通帳を見つければ疑いは晴れるだろうと思っていました。
しかしそんなに簡単にはいきません。
通帳を見つけてあげると、今度は「通帳を隠して嫌がらせをした!」に妄想が変化してしまったのです。
(その時の様子はこちら)
ああ言えば、こう言う。という状態で、物盗られ妄想の人は自分の間違えを認めることができないと言われています。
今回は私が祖母の介護のために祖母の家に行き、祖母が妹に盗られたと思い込んでいるお金を見つけることになりました。
お金を見つけるのは簡単だろうと思ってはいたのですが、どうやって妹の疑いをはらすのかが問題でした。
たとえ、私がお金を見つけだしても、おそらく何らかの理由をつけて「妹がお金を隠した!」や「嫌がらせをした!」と言い出すことは目に見えていました。
私達家族は、祖母が間違いを認めて、妹に謝罪をしてほしいと思っていたので、私はお金を探す前に祖母といくつかの確認と約束をしました。
この確認と約束をすることで、何とか祖母に、自分の考えが間違いだということを認めさせることに成功します。
お金が家から見つかった時のために
上記にも書かせていただいたのですが、以前、祖母は私の母が通帳を盗んだと言いだし、通帳が家から見つかった後は「通帳を隠して意地悪をした」と、言うことが変わり、母が犯人だという思い込みを修正できませんでした。
この経験から、今回私は、お金を探す前に祖母に確認と約束をしました。
私:「おばあちゃん、よっちゃん(妹)がお金を盗んだんやろ?もしそうなら、家にはお金がないはずやで?」
祖母:「そうじゃよ、私がどこそこ探してなかったから、あの子が盗ったんよ!」
私:「もし家からお金が見つかったらどうする?よっちゃんが盗んでないってことになるで?」
祖母:「そうやろね。」
私:「よっちゃんはこの家でお金を隠したりしてないやろ?」
祖母:「しとらんよ。あの子はこのタンス(寝室)にお金をしまったフリをして、持って帰ったんじゃ!」
私:「じゃあ、もしお金が見つかったら、よっちゃんに謝らなあかんで?」
祖母:「謝るよ!そしたらお前(私)が探してみない!」
私:「約束やで?お金を見つけたるから、絶対に謝らなあかんで?」
祖母:「約束する。でも絶対この家にはないよ!」
母を犯人と思い込んだ時のように、ころころと言うことを変えないよう、念入りに細かく確認をしました。
この後すぐにお金を見つけだすことに成功し、祖母に知らせます。
私:「おばあちゃん、お金見つかったで!」
祖母:「えぇ〜!?どこにあったんね?」
私:「和室の引き出しの奥のほうにあったわ!こっちに来て見てみ。」
祖母:「ほんとじゃ!よかった〜、見つかって!」
私:「ここ、おばあちゃんがよく物を隠しとった場所じゃない?」
祖母:「そうじゃ!誰がこんなところに置いたんじゃろか?」
私:「ここの場所を知ってるのは、おばあちゃんだけやろ?よっちゃん(妹)はここの場所、知らんやろ?」
祖母:「そうじゃね〜。おかしいね〜。」
私:「だから、よっちゃんがお金を盗んでないってことやろ?さっきおばあちゃんも言ってたやん、よっちゃんは隠したりはしてへんって!」
祖母:「言うたけど、あの子は勝手に人の家のタンスを開けたりしとったんよ?」
私:「でも、ちゃんと30万円全部あるやないの。だからよっちゃんは盗んでないやろ?」
祖母:「う〜ん。」
祖母はお金が見つかったことで、少し安心したようでした。
安心すると、こちらの言うことにも耳を傾けてくれる時が多いので、ここで優しく語りかけます。
私:「おばあちゃん、前にも言ったけど、おばあちゃんはレビーっていう病気やろ?(レビー小体型認知症のパンフレットを見せながら)ここにも書いてるけど、この病気はな、時々頭がボ〜となるんやって。おばあちゃんのせいじゃないねんけど、この病気になると誰でも頭がボ〜となってその時にしたことを忘れてしまう時があるんよ。」
祖母:「私は忘れたりせんけどね〜。」
私:「でも、おばあちゃんしか知らないところから、お金がでてきたやろ?だからたぶんレビーが悪さをしてお金を置いた場所を忘れさせたんやと思うで。」
祖母:「そうじゃろうか?」
私:「たぶんそうやと思うで。まぁお金は全部でてきたんやし、良かったわ!」
祖母:「そうじゃね!」
私:「でも、よっちゃんにはちゃんと謝らなあかんで。探す前に約束したやろ?」
祖母:「わかってるよ。ちゃんとあとで電話するよ。」
この後、祖母は妹に電話をし、泣きながら謝っていました。
物盗られ妄想になる方は、認知症の初期段階の人が多く、記憶がしっかりしている時があります。
なので「私は物忘れなんかしない!」と思い込んでいる人がほとんどだと思います。
また、自分の間違いを認めたがらないのも特徴です。
人によっても違いますが、私の祖母の場合は、上記で書いたように「確認」と「約束」をすることで、「ああ言えば、こう言う」という状態を最小限に抑えることができました。
(祖母の場合、約束した直後では、だいたい約束を守ってくれます。しかし日をまたぐと「そんな約束していない」と、約束を覚えている時でも自分が不利になるような時は嘘をつくことがあるので(笑)、何かあれば、できるだけ約束した日に解決するようにしています。)
また「祖母のせいで」と言うのではなく、「病気が悪さをしている」ということを強調することで、祖母が怒らずに話を聞いてくれました。
(祖母が落ち着いたタイミングで話をすることも大事なことです)
この時から、祖母が「物がなくなった」と言った時は、「確認と約束」をしてから物を探すようにしています。
同じ物盗られ妄想の方でも1人1人症状が違うので、対処法も1人1人変わってくると思います。
良い介護というのは、人それぞれだとは思いますが、もし私の祖母と似たような物盗られ妄想(被害妄想)の方と接することがありましたら、「確認と約束」をしてみてはいかがでしょうか?