感謝ができる時、できない時
祖母の介護をしていて大変なことは多いですが、介護をしていて気づかされたこと、教えられたこともたくさんあります。
その中の1つが、今回書かせていただく「感謝することの大切さ」。
祖母は認知症になって以来、怒りっぽくなったり、わがままになったりと、物事に対して文句を言うことが多くなりました。
例えば料理や洗濯などの家事に関して。
祖母はレビー小体型認知症からくるパーキンソン病の影響で足が悪くなっていました。
自分では家事ができなくなってきていたので、1人暮らしの間はヘルパーさんに頼み、私か母が介護で祖母の家にいる時は私達が家事をしていました。
自分のできないことをしてもらうので、「手伝ってくれてありがとう」と思わなければいけないのですが、祖母は病気の影響で、人への感謝の気持ちより不満の気持ちのほうが大きくなってしまいます。
ヘルパーさんが料理をすると「味が濃い」や「味が薄い」と言ったり、美味しくないと言ったり。
ヘルパーさん本人に直接文句を言うことはありませんが、私の母によく電話で愚痴を言います。
また、母(祖母の娘)が介護で帰省している間は、「子供が親の面倒を見るのが当たり前や!」ということが祖母の口癖で(笑)、あまり母に感謝することはありません。
病気になる前はこんなことを言うことは無く、「遠いからそんなに頻繁に帰ってこなくてもいいよ」とよく気をつかってくれる祖母でした。
しかし病気によって物事のとらえ方が変わっていまったせいで、不平、不満ばかりを言うようになってしまいました。
どこに行っても、何をしても、ほとんどの場合、物事を悪くとらえてしまいます。
そんな祖母ですが、私にだけはよく「ありがとう」と言ってくれます。
それは私が祖母の「孫」であるということが大きいんだと思います。
祖母の頭の中では、自分の子供に面倒を見てもらうのは当たり前のようですが(笑)、孫に面倒を見てもらうのは申し訳ないという考えのようです。
そのおかけで、私といる時はよく感謝をしてくれ、心も落ち着いている時間が多い気がします。
(もちろん祖母の機嫌が悪い時は、わがまま、文句を言われますが 笑)
当たり前とは
祖母を見ていると、「当たり前」って何なんだろうと思うことがあります。
私達の周りにいる「人」、周りにある「物」、全ての当たり前に思える物事は、じつはとてもありがたく、感謝すべきことなのかもしれません。
それを「当たり前」と思ったり、感謝できなくなってしまうと、些細なことで不満に思ったり、文句を言ったりしてしまうんだと思います。
祖母を見ていると、私自身も祖母と同じように、いろいろな物事を当たり前と思ってしまっていることに気づかされます。
例えば、親にご飯を作ってもらうことについて考えてみると、親としては子供の健康を考え、喜んでもらおうと味付けを工夫したり、食べる人の気持ちを考えて料理していると思います。
私は祖母にご飯を作るようになって初めて、ご飯を作る人の気持ちが少しわかったような気がします。
今までは、ご飯を作ってもらうのが当たり前になっていて、どういう気持ちでご飯を作ってくれているのかを考えたこともありませんでしたから。
だから、ついつい味付けに文句を言ったり、不満を言ってしまっていたんだと思います。
この他にも、今まではたくさんの物事に対して「当たり前」と思ってしまい、感謝できずに不平不満に思うことがあったと思います。
性格とは簡単に変えることができないので、私は今でもよく私生活の中で不平不満を思うことがありますが、その時こう思うようにしています。
「これはイライラすべきことなのか?感謝すべきところや良いところはないか?」と。
そうすると、大抵の場合、自分中心の考えであったり、相手の気持ちを汲み取れていないことに気づかされます。
心に余裕を
物事に対して感謝できたり、良い所を見ることは、心に余裕をもたらし、心を豊かにてくれると思います。
だってそう思いませんか?
同じ物事に対して、イライラするのと、ありがたく思えるのとでは、どちらが良い心の状態だと言えるでしょうか?
もちろんありがたく思えるほうが、その人にとっては良い心の状態だと言えると思います。
良い心の状態にあるということは、様々なことに寛大に考えることができ、普段イライラする事柄でもイライラせず、やさしさを持って対応できることに繋がると思います。
逆に私の祖母のように何に対しても不平不満を思ってしまう心の状態というのは、自分で自分の心の余裕をなくし、イライラしてしまったり、文句を言ってしまったりと、心が苦しい状態になってしまうと思います。
ただ、口で言うのは簡単ですが実際に全ての物事に対して、感謝したりイライラしたりせずに対応することはとても難しく、私にとっては不可能なことです(笑)
しかし普段の生活の中で様々な物事に対して「感謝しよう」「良い所を見つけよう」と意識することで、少しずつ、本当に少しずつですが(笑)、以前よりもイライラすることが減り、感謝できる機会が多くなりました。
そして、感謝できる機会が増えれば増えるほど、その感謝の量だけ、介護であれ、人間関係であれ、社会での生活であれ、心に余裕を持って、前向きに対応することができるようになっていると感じています。
祖母はレビー小体型認知症になってしまい、物事に感謝することが難しい状況で心に余裕がない状態が続いています。
だからこそ、私が少しずつでも今より心に余裕を持てるようになり、やさしさを持って祖母に向き合えれば、その分、祖母の心を落ち着かせることができ、「感謝することの大切さ」を身をもって教えてくれた祖母に対する恩返しになるのかなと思っています。